食物アレルギー
ある特定の食べ物を食べると、アレルギー反応が出るものです。多くは「IgE抗体」を介した即時型症状で、食べて直後~2時間以内に図1のような症状が出ます。
1.病型
病型(表1)により、発症年齢、原因となりやすい食品、食べられるようになる(耐性)確率、アナフィラキシーの危険性が異なります。
◎ 口腔アレルギー症候群
花粉アレルギーの人が、花粉と似たたんぱく質を持つ、果物や野菜に反応し(交差反応)、口やのどのかゆみやイガイガがみられるものです(花粉-食物アレルギー症候群)。生の果物では症状が出ても、ジャムや缶詰など加熱や加工すれば食べられることも多いのが特徴です。
同じ交差反応として、ゴム手袋などのアレルギーの人が、アボガドやクリを食べて起こすラテックス-フルーツ症候群もあります。
◎ 食物依存性運動誘発アナフィラキシー
特定の食べ物を食べて、30分~2時間以内に運動することでアレルギー症状が出ます。「食べただけ」では症状が出ません。
10~20代の男児に多く、昼食後、昼休みに運動し、アナフィラキシーを起こして発症します。小麦と甲殻類(エビ、カニ)が多いですが、他の食品でも起こります。食物アレルギーの既往がなくても発症し、初発は予測できません。
◎ 食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎
生後2~3カ月で発症するアトピー性皮膚炎の赤ちゃんの中には、食物アレルギーを合併することがあります。母乳栄養でも、多くの場合、お母さんの除去食は不要ですが、離乳食以降、赤ちゃん自身が卵や牛乳を食べると即時型症状を起こすようになります。
気になる場合は、かかりつけの小児科医にも相談しましょう。
2.原因
乳児期に発症する鶏卵、牛乳、小麦アレルギーの多くは小学校入学までに耐性を獲得します。これ以外の甲殻類や、ナッツ、果物などは、幼児期以降、成人でも発症し、治りにくい点が特徴です。
3.診断
問診により①特定の食品を食べて症状が出ることと、血液検査や皮膚テストにより②その食品に対する特異的IgE抗体があることの両方を確認します。
IgE抗体の陽性だけでは診断できません。はっきりしない場合、疑われる食品を実際に食べる「経口負荷試験」が必要です。
4.治療
原因食品を除去します。自己判断での除去食は、栄養の上でも、食生活の質を落とす意味でも危険です。正しい診断を受けて、除去する食品は最小限にしましょう。
5.もし食べてしまったら?
症状に応じて対応します。(アナフィラキシーの項参照)
症状が出るまでの時間や、症状の出方は、食べた量や体調・運動により異なります。
前もって主治医と対応について確認しておきましょう。
6.予防
確立された予防法はありません。「3歳まで卵を食べさせない」など食べ始めを遅らせたり、妊娠・授乳中にお母さんが控えたりしても、予防とはなりません。
皮膚のバリア機能障害が、食物アレルギー発症に関与する可能性が示されています。保湿や、アトピー性皮膚炎の治療により、きれいな皮膚を保ちましょう。
アナフィラキシー
生命に関わる重篤なアレルギー症状のことで、じんましんなどの皮膚症状だけでなく、呼吸困難や激しい腹痛・嘔吐など、全身のさまざまな臓器に症状が出ます。血圧低下や意識障害を伴うと「アナフィラキシーショック」といいます。
1.原因
食べ物、ハチ毒、医薬品(抗菌薬、解熱鎮痛薬、造影剤など)が多いです。
2.症状と対応
即時型のアレルギー反応で、原因となる物質に曝露された直後~2時間以内に発症し、急にひどくなります。
じんましんはほとんどの例にみられますが、全身にじんましんが出てもアナフィラキシーとは言えませんし、遅れて出てくることもあります。誤って食べた、じんましんが出たなど、アレルギー反応が疑われる場合は慎重に経過をみましょう。
3.治療
呼吸器症状(呼吸が苦しい、咳が止まらない、ゼイゼイする)または循環器症状(ぐったりする、意識がない)がみられる際(図2 赤色に相当する場合)は、アドレナリンの筋肉注射が必要です。
皮膚症状や粘膜症状(図1)に対しては、抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬の内服または注射を用いますが、呼吸器症状への効果は期待できません。
東京都福祉保健局 食物アレルギー緊急時対応マニュアル
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/allergy/pdf/pri06.pdf
4.予防
食物アレルギーやハチ毒アレルギーなど、気を付けていても繰り返し起こす可能性が高い場合は、必要に応じてアドレナリンの自己注射(エピペン®)が処方されます。使い方や、使用するタイミングについて、前もって主治医と相談しておきましょう。
国立病院機構熊本医療センター
小児科
医師 緒方 美佳